このページは、臨床研究(量的研究)の抄録を書くためのガイドを記したものです。また、過去の年次総会で高評価であった臨床研究とコメントを記載しました。併せてご覧いただくと理解が深まります。2016年度の投稿に是非ご活用下さい。
米国内科学会本部のサイトも参照ください。
Family Support Is Associated with Caregiver Burden (米国内科学会日本支部年次総会2013 P-01)
Kento Takahashi (1, Yosuke Yamamoto(2
1)Undergraduate Student, Faculty of Medicine, Kyoto Univetsity, Kyoto, Japan:
2)Department of Epidemiology and Healthcare Research, Graduate School of Medicine, Kyoto University, Kyoto, Japan
Background: Despite the increasing interest in informal caregiving and its burden, there have been no studies on the relationship between the burden on informal caregivers and their perception of family support.
Study Design: Cross-sectional study.
Setting & Participants: Vulnerable elderly patients in 10 home care service facilities (N = 137). A caregiver was defined as the patient's relative who most frequently provided informal care.
Predictor or Factor: Perceived family support.
Outcomes: Caregiver burden.
Measurements: Perceived family support was assessed using a five-point Likert scale. Caregiver burden was assessed using the Burden Index of Caregivers (BIC).
Results: The mean age of the patients in this study was 80.9 years and 31.4% were men. The mean caregiver age was 65.0 years, and 29.2% were men. Of those, caregivers who perceived family support were 48.5%. Multivariable linear regression analysis revealed that caregivers who did not perceive family support were likely to have higher caregiver burden (β-coefficient = 5.00; 95% confidence interval (CI) : 1.70 to 8.30, P = 0.003).
Limitations: We cannot determine causation due to its cross-sectional nature. Adjustment of unknown confounding factors was not possible.
Conclusions: Our results suggest that there is a significant relationship between caregivers' perception of family support and lower caregiver burden.
評者:栗田 宜明 先生(福島県立医科大学 臨床研究イノベーションセンター)
家族のサポートが介護者の介護負担感に関係するという、主たる研究仮説に答えた簡潔なタイトルであるため、読者が内容を一目で理解できます。
家族や知人による介護(informal caregiving)と負担感が昨今注目されてきていることが明記されているため、コンテキストが理解できます。
現状としてこれらの介護者の負担感が介護者家族によるサポートとどのような関係性があるか不明である点を明記しているため、これを明らかにすることが主たる目的であることが理解できます。
Methodsをいくつかの小見出しに分けて記載しており、読者に研究内容が分かり易く記載されています。
Study design(研究デザインの型)、Setting & Participants(対象者は脆弱な高齢者を介護する家族や知人)、Predictor or Factor(主観的な家族のサポートの程度)、 Outcomes(家族負担感)、Measurements(家族負担感と家族のサポートをどのように測定したのか)が明確に記載されています。
字数が許されれば、家族負担感を感じる場合とそうでない場合のカットオフまで明記するとよいと思います。
研究対象者の属性が明記されています(被介護者や介護提供者の平均年齢、性別)。
家族のサポートが得られると感じている介護者の割合が明記されています。
家族のサポートが得られていると感じない場合は、(そうでない場合に比べて)家族負担感のスコアが5点悪化することが明記されています。
家族のサポートの有無と家族負担感のスコアの関係性を分析するのに必要な統計解析手法(multivariable linear regression analysis)が明記されているため、交絡因子を調整の上で相応しい解析が行われたことが伝わります。
95%信頼区間を明記している(1.7点から8.3点)ことも良いと思います。
introductionでの問いに対する結論が1行で明快に記載されています。
研究限界をlimitationとして別に小見出しをつけ、解釈の上で注意すべきポイントを明記されていることも好ましいと言えます。
字数が許されれば、結論から研究の意義を導き出す一文を続けて締めくくると良いと思います(家族による介護への協力が必要である、など)。これにより、研究の重要性が他者により伝わり易くなると思います。