臨床研究集中コース:Intensive Course
for Clinical Research 2022
企画責任者:日本臨床疫学会代表理事 福原俊一
(京都大学、Johns Hopkins 大学)
プログラム委員⾧:山崎 大(京都大学)
協力:京都大学医学研究科 臨床疫学グループ
福島県立医科大学 白河総合診療アカデミー
連携:日本臨床疫学会
(生涯教育の単位を取得できます)
1890 年代末、米国ジョンスホプキンス大学は、ドイツ流の基礎医学と、スコットランド流の推論医学の両方を取り入れたユニークな医科大学として発足しました。「四天王」の 1 人であるW. Osler 教授は、世界で初めて内科学の概念を作り、講堂ではなく病棟で学生や研修医を教育する方法を導入しました。以来内科学は発展をとげましたが、同時に過剰な細分化という副効果も産みました。W.Osler 教授直系の K. White 教授は、この傾向に警鐘を鳴らし、内科の再統合を主張し、1970 年代中盤に総合内科学が各大学に誕生しました。当初、総合内科に学術的基盤がなかったため、大学でのポジショニングに苦労しました。 その中で臨床疫学と言う新しい研究領域が生まれ、特に総合内科の中で発展を遂げ、現在では他の専門領域にも拡がっています。わが国でも 1990 年代に総合内科学が各大学に誕生しましたが、未だ学術的基盤が確立していないのが現状です。日本の医学全体を見ても、基礎医学研究重視、臨床研究軽視のアンバランスは続き、これが日本発の臨床研究世界 30 位と言う現状に繋がっています
上記の趣旨で、ACP会員の皆様に、臨床研究の楽しさを知ってもらい、また基本的な考え方やスキルを学んでいただくために、日本臨床疫学会と共催セッションを企画し、昨年第一回を開催しました。この集中コースが実現し好評でしたので、今年も引き続き、開催いたします。これまでは、単発のワークショップなどが提供されてきましたが、土曜日の朝から、日曜の昼までの時間枠を確保して、本格的な教育セッションを企画ました。まず土曜日午前の「臨床疫学 連続講義シリーズ」で、臨床疫学研究の全容をレビューします。
さらに、土曜日の午後から日曜日の昼まで、「臨床疫学ハンズオンシリーズ(オンライン)」が 5 つのセッションに分けて提供されます。自己学習資料による事前学習で積極的に手を動かして頂き、当日は臨床疫学専門家からの詳細な解説とQ&Aがある中身の濃い贅沢なセッションです。
ACP 会員で日本臨床疫学の専門研究者でもある講師陣の協力によって今回の企画が実現しました。
この豪華な教育セッションにぜひご参加下さい。
福原 俊一
日本臨床疫学会代表理事、京都大学、Johns Hopkins 大学
濱口 杉大
ACP 日本支部 年次総会・講演会 2022 会⾧
臨床研究集中コースに参加ご希望の方は、年次総会のご登録後に送られる自動返信メールにある臨床研究集中コースの申込URLよりお申込ください。
1 臨床研究レクチャーコース / On demandレクチャーコース:
2 臨床研究ハンズオンコース:
10:25-10:50 | アカデミック内科医への道標: 「臨床研究はあなたを幸せにする」(ライブのみ) 福原俊一 (京都大学、Johns Hopkins 大学) |
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10:55-12:05 | 臨床研究レクチャーコース 連続講義 Part 1 ① リサーチクエスチョンの作り方 山本 良平(京都大学) ② 先人に学ぶ 佐々木 彰(京都大学) ③ 疑問のモデル化 山崎 大(京都大学) |
12:05-12:55 | 臨床研究レクチャーコース 連続講義 Part 2 ④ 比較の質を高める 清水さやか (京都大学、iHope International) ⑤ 診断予測モデル研究 高田 俊彦 (白河総合診療アカデミー) 連続講義 質疑応答 |
13:05-14:05 | 臨床研究 ハンズオンワークショップ ① リサーチクエスチョンの作り方(予測ですか、因果ですか?) 山本 良平(京都大学) |
14:15-15:15 | 臨床研究 ハンズオンワークショップ ② 先人に学ぶ(PubMedとZoteroを用いた医学論文の検索と整理) 佐々木 彰(京都大学) |
9:25-10:25 | 臨床研究 ハンズオンワークショップ ③ 疑問のモデル化 (DAGitty を使った DAG 作成) 山崎 大(京都大学) |
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10:35-11:35 | 臨床研究 ハンズオンワークショップ ④ 比較の質を高める (EZR を使った多変量解析) 清水 さやか (京都大学、iHope International) |
11:45-12:45 | 臨床研究 ハンズオンワークショップ ⑤ 診断予測モデル研究 (RStudioを使った解析ハンズオン) 高田 俊彦(白河総合診療アカデミー) |
講義名 | レクチャーコース 連続講義時間 |
ハンズオンワーク ショップ時間 |
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① リサーチクエスチョン の作り方 | 6月25日(土) 10:55-12:05 |
6月25日(土) 13:05-14:05 |
②先人に学ぶ | 6月25日(土) 10:55-12:05 |
6月25日(土) 14:15-15:15 |
③ 疑問のモデル化 | 6月25日(土) 10:55-12:05 |
6月26日(日) 9:25-10:25 |
④ 比較の質を高める | 6月25日(土) 12:10-12:55 |
6月26日(日) 10:35-11:35 |
⑤診断予測モデル研究 | 6月25日(土) 12:10-12:55 |
6月26日(日) 11:45-12:45 |
① リサーチクエスチョンの作り方(予測ですか、因果ですか?)
講師:山本 良平(京都大学)
臨床の中で抱いた疑問は臨床疑問 (Clinical Question: CQ)とよばれる。臨床研究の最初のステップは、CQを具体的かつ明確な研究疑問 (Research Question: RQ)に昇華させることだ。CQからRQに昇華させるまでに3つのステップがある。1つ目は自分の疑問のタイプはなにか、つまりは記述なのか、予測なのか、因果なのかを決めることである。2つ目は疑問の構造化、3つ目はRQの徹底チェックと改訂である。このコースでは、まず、レクチャーと事前課題(所要時間1.5時間程度)により、このプロセスを進めるために必要な知識を習得する。ハンズオンでは例題のCQか参加者自身のCQをもとに、実際にRQにするための議論を参加者と共に行っていく。
② 先人に学ぶ(PubMedとZoteroを用いた医学論文の検索と整理)
講師:佐々木 彰(京都大学)
クリニカルクエスチョン(CQ)について、分かっていることと分かっていないことを調べ整理すること(先人に学ぶ)が必須となる。先人に学ぶ過程では、ただやみくもに文献検索をするだけでは重要な論文が抜け落ちる可能性があるため、系統的な検索式を立てることが重要である。また、見つかった論文を整理して保存しなければ、必要時にすぐに論文情報を取り出せないことになりうる。本セミナーでは、先人に学ぶ過程を、検索(PubMedでの検索式の立て方)と整理(フリーソフトウェアであるZoteroを用いた整理法)に分けて解説し、これらに必要な知識や技術を習得することを目標とする。
③ 疑問のモデル化(DAGittyを使ったDAG作成)
講師:山崎 大(京都大学)
臨床家が取り組むのは、「ある要因が病気の発症原因であるのか」、「治療が病気の予後を変えるか」といった因果関係を検証するタイプのリサーチクエスションが多い。因果関係の検証には、まずなぜそのように考えるのかというメカニズム(中間因子)や比較を邪魔する要因(交絡因子)を詳細に検討する必要があり、その際に概念をまとめる図(DAG)が有用である。本セミナーでは、DAGitty というフリーソフトウェアを用いて、DAG を作り、因果関係の検証に必要な知識と技術を体得することを目的とする。
④ 比較の質を高める(EZRを使った多変量解析)
講師:清水 さやか(京都大学、iHope International)
臨床研究では、対象者の背景や治療方法の違いによってアウトカムに差があるかどうか比較することが多い。本セミナーでは、その比較を歪めうる交絡とその対処方法を扱う。交絡への対処として、統計ソフトウェアEZRを用いた多変量解析を実践する。また、解析結果の解釈について議論する。
⑤ 診断予測モデル研究(RStudioを使った解析ハンズオン)
講師:高田 俊彦(白河総合診療アカデミー)
肺塞栓症のWells criteria、溶連菌性扁桃炎のCentor criteriaなどのように、複数の臨床情報を組み合わせて、疾患の確率の評価を行うツールを診断予測モデルと呼ぶ。診断予測モデルに関する研究は年々盛んになってきているが、その方法論や解析の実際について系統的に学ぶ機会は限られている。本セッションでは、診断予測モデル研究について、その理論および解析の実際について学ぶことを目的とする。